Sakazaki's Will: Section 01

最終工程

「欠陥は絶対に見逃さない!」

工場のラインの最終工程は〈検査・出荷〉である。高品質のクルマを届けるために、検査が大切なことは言うまでもない。外装と内装を凝視し、運転席でハンドルを動かし、フロントパネルの中を覗き、台上走行を行い、灯火を点灯点滅させる。これらは、人の目や人の手による検査だ。

Sakazaki's Will: Section 02

ECU

「見えない部分をどう検査するか?」

人ではお手上げの部分がある。ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれるコンピュータだ。エンジン、トランスミッション、パワーステアリング、エアバッグ…の個々を制御するECUがクルマには搭載されている。多い車種では50個〜100個におよぶECUの動きは、人の目には見えない。ではどうするか?である。

Sakazaki's Will: Section 03

端末

「大事な最終工程の状況を手の中に」

Hondaの検査工程では、LET(Line End Tester=完成車工場ラインの最終工程の検査機)というハンディサイズの端末をクルマにつなぎ、相互にデータ通信することで、ECUの検査を行っている。各電装システムが正しく作動していれば「Pass」の文字が、他にもエンジンの回転数や、冷却水の温度などの数値が、端末のモニターに瞬時に表示される仕組みだ。

Sakazaki's Will: Section 04

ゴエモン

「データを手に入れろ」

このLETの開発支援端末は、ゴエモンと呼ばれている。Ghost on ECU Monitorの略称であり、膨大なデータという富(とみ)を手の中にかすめ取るイメージで、天下の大盗賊・石川五右衛門から拝借した。LETの第2世代の改良版2.1Gから3.0Gへの進化が、彼のチームのミッションだった。

Sakazaki's Will: Section 05

2.1G→3.0G

「対応できる工程を拡げよう」

2.1Gは、完成検査ラインでの使用を前提としていた。だが、ハイブリッド車や燃料電池車へと移行する中で、ECUにプログラムを書き込む工程が増え、そのたびにLETのソフトを改造していた。3.0Gではあらかじめ、完成検査ライン以外の工程にも対応させることが求められた。

Sakazaki's Will: Section 06

1/10000

「工場のログを自社ですぐに解析できるように」

2.1Gには、もう1つ泣き所があった。極稀な頻度で電装部の不具合が見つかった際、状況の解析に多くの工数を要していたのだ。そこで3.0Gでは、LETが吐き出したログを工場から送信してもらい、なにが起きたのか、なにが原因だったのか、ゴエモンを使ってその解析をEG(ホンダエンジニアリング)側ですぐにできるようにした。

Sakazaki's Will: Section 07

使い勝手

「さっきの人とは真逆な要望だ…」

彼がメインで担当したのは、端末の使い勝手を左右するインターフェイスの設計だった。機能性は高めたいが、操作ボタン一つの追加や配置変更だけでも、2.1Gに慣れてきた作業者にはストレスになってしまう。現場の多種多様な思いをとりまとめ、いかに最適解として形にできるかが問われた。

Sakazaki's Will: Section 08

無線

「なぜ繋がらない…」

通信に無線を使っていることによる障害も、テスト段階で新たに発生した。日本では大丈夫だったのに、北米の工場ではうまく通信できない。グローバルに横展開していく中で、ローカル特有の問題は付きものである。原因の切り分けを行い、不具合を一つ一つ、つぶしていった。

Sakazaki's Will: Section 09

知見

「自分は本当に納得できているのか?」

EGへの転職前、ソフトウェアはかじった程度だった。だが、基本となる考え方をしっかり持ってさえすれば、ソフトのメーカーやチームの仲間たちという強い味方がいる。周りの意見をとことん聴きながら知見を高め、Hondaにとってベストだと思えるものをつくれている実感はとても強い。

Sakazaki's Will: Section 10

リリース

「Hondaを選ぶ動機を増やしたい」

2014年、3.0G LETが埼玉製作所を皮切りにリリースされ、現在では1200台を超えるLETが全世界の工場で稼働している。四輪の品質をどんどん上げることに貢献する検査機づくりで、世界中の人がHonda車を選ぶ動機へと繋ぎたい。二輪への対応や自動運転領域への挑戦など、今後の楽しみは尽きない。

PROFILE

坂﨑剛

車体生産技術部

精密機械工学科で精密工学を学んだ後、産業機械メーカーに就職。担当していた燃料電池関連設備の売り込みでEGを訪ねた際、世界中のHondaの生産技術を一手に担っている点に魅力を感じた。転職後は、ソフトウェアという経験の少ない分野へと飛び込む形になったが、さまざまなシステムづくりを楽しみながらできている。機械のイメージが先行する生産設備づくりだが、じつはソフトウェアの需要が幅広いことを再認識している。

Takeshi Sakazaki